バカンスについて
法定有給休暇が5週間と定められているフランスでは、堂々とバカンスをとれるのがいいところである。学校も年に5回のバカンスがある。
ハンディキャップをもつ子供を抱えている場合、バカンスで旅行に出るのは大きなチャレンジとなる。交通機関へのアクセス、行った先での受け入れ体制、いざという時の準備など、通常以上の準備やリサーチが必要となってくる。発達障害や自閉症の場合、突発的な出来事に対処しきれないことも多いため、旅行に行くということを理解·納得させるための準備も必要になる。たとえば行き先の写真を見せたり、どういう乗り物に乗っていくかを説明したりする。
交通機関も関門の一つである。長女が思春期になるころまでは、毎年のように家族で日本に帰ったりしたが、空港までは予約したタクシー、飛行機は直行便一択、搭乗時にはお気に入りの本やゲーム、お絵描き帳、お菓子などを山のように持ち込んでいた。空港や駅でパニックを起こしたことも何度かあり、出発前からどっと疲れたりする。
旅行先に着くと、いろいろなところを訪問したり、イベントに参加したりすることになるが、これもまずは下調べをしたうえで、万全の体制で乗り込む。家族向けのミュージカルに参加して開始5分で撤退したり、動物園でパニックになってすぐ帰ったりしたこともある。娘の表情や行動の変化を常に観察することになるので、こちらも十分楽しめない。ただでさえ疲れる子連れの外出、ハンディがあるとなればなおさらだ。周囲に迷惑をかけないように気を使うし、必要な場合は入場料を惜しまず、すぐに撤退していた。
フランスでは、ハンディキャップを持つ人に優しい制度も多い。障害者カードを持っていれば博物館や市民プールの入場料が無料になることもあるし、SNCFでも割引があり、カードに要介助と書かれていれば、介助者の乗車賃が無料になる。
障害をもつ子供や大人向けのツアーを扱っているアソシエーションもいくつもある。娘もこの夏、そういったツアーを利用して田舎に滞在する予定だ。滞在中は支援員さんがついてくれて、障害の特性に合わせたアクティビティを行ってくれる。家族はその間、療育から離れて休めるというわけだ。
もちろん通常の林間学校に比べて費用はかなり高い。そのため公的·私的な援助をあちこちに申請することになる。MDPHの援助、居住している市町村の手当、各種アソシエーション、親の職場や社会保障や各種保険からの援助など、意外と存在している。ただし、自分で探して自分で申請しないといけない。うまくいけば、通常の旅行の値段ぐらいまでに抑えることもできるかもしれない。
それほど大変ならば、わざわざバカンスに連れ出さなければいいではないか、という意見もあるかもしれない。しかし、彼らはハンディキャップがあるということで、すでに定型発達の人たちが普通に行っている体験ができていないのである。親としては少しでもいろいろな経験をしてほしいし、日常の活動以外の刺激も得ることも必要だと考える。特に発語がない場合など、実際にいろいろな活動をする中で、何が好きで何が嫌いかが見えてくる。それは新たなトラブルを防ぐ手がかりにもなるし、本人の隠れた能力を見出すきっかけにもなる。自閉症というのは感覚統合や表出の障害なので、彼らも我々と同じく、ルーティーンに飽きることも、気分転換をしたくなることもあるのだ。それぞれの立場で、互いを尊重しつつ、バカンスを楽しめる世界が実現するといいなと思っている。
パリ在住、二児の母。でこぽん長女は現在FAMで生活中。
温泉と桜餅(絶対道明寺派)が大好きなのにフランスにはないのが悲しい。